1. 制度的背景 ― 「暴走を許した仕組み」
ルーレット共和国の憲法・制度には、戦時/非常時の大統領権限集中が組み込まれていました。
- 強大な大統領制:立法・行政・軍の統帥権を大統領に集中させる仕組み。
- 国家緊急権(時限立法権):戦時や非常時に、議会承認なしで大統領が法を制定できる。
- 選挙停止・任期延長:非常時には選挙が停止され、2期8年制限を超えても無制限に大統領職に留まれる。
- チェックの不在:司法や議会が「国家非常時」を理由に歯止めをかけられない設計。
本来は「危機対応の即応性」を確保するための仕組みでしたが、終戦後も解除されなかったため、緊急権が恒常化してしまったことが最大の問題です。
2. フェルマン体制との違い
- フェルマン大統領(戦時期)
- 緊急権を活用して戦争を指導したが、戦後処理はゴルモアとの密約に基づき「マーベチックを名目独立させる」方針。
- 戦時体制を「終戦後は解除する」という前提で運用していた。
- ヴェルダー大統領(戦後〜1464年死去まで)
- フェルマン急死後に副大統領から昇格。密約を無視し、「完全併合・同化」を目指す強硬路線へ転換。
- 戦時体制を「統治安定まで延長」と称して恒久化。
- 独裁的統治の中で苛烈な同化政策と弾圧を推し進め、大量の死者を出した。
つまり、同じ制度でも指導者の方針で「一時的非常権限」か「恒久的独裁」かが分かれた、という構図です。
3. ヴェルダー個人の要因
a. 権力欲と不安定な立場
- 元々副大統領であり「偶然の昇格」。正統性に欠けるため、強権支配で正統性を補強する必要があった。
- 「戦勝大統領」としての栄光を固めるために強引な政策に走った。
b. イデオロギー的要素
- フェルマンの「名目独立」路線を裏切り、マーベチックを「異民族」ではなく「同化すべき領土」とみなした。
- そのための手段が、教育改革・報道検閲・土地収奪・強制移住といった徹底的な同化政策。